ベンチャーの経営事例を大企業のメンバーが聞くと、
その意思決定の速さ、周囲を巻き込む力、行動の一貫性に深く感銘を受けることが多い。
ベンチャー側から見れば、それは“当たり前のこと”にすぎない。
だが大企業では、それがレアケースになってしまっている。
真剣味が違う――そう言ってしまえばそれまでだ。
ベンチャーでは、成長を目指す以上、意思決定し、スピードを上げ、周りを巻き込みながら進むしかない。
一つひとつが真剣勝負で、失敗すればすぐに修正する。
それ以外に成長の道はないのだ。
一方、大企業には「勝ちパターン」がある。
既に安定した収益を生む事業があるから、冒険的なプロジェクトに踏み出す必然性がない。
挑戦の必要がない組織は、当然ながら“失敗の経験”も失われていく。
ところが――である。
新規事業や新しい開発を始めようとすると、そこで初めて“冒険”が求められる。
しかし、多くの場合、やったことがない。
やり方を本で読んだ知識はあっても、それを組織の中で実装した経験がない。
知識も経験もないところに、洞察は生まれない。
つまり、大企業の眼で見る「理想的な事例」は、
ベンチャーの眼から見れば「当たり前のこと」なのだ。