コテンラジオで「財務価値と意味価値のバランスこそが新時代の経営理論になりうる」という話を聞いた。新規事業開発に携わる立場からすると、これは既に始まっている現実だ。
新規事業の最終目標はもちろん財務価値の創出にある。しかし、立ち上げ初期の短い時間軸では財務的には必ずマイナスであり、財務的成果として評価できない。だからこそ、意味価値が明確に認識されていなければ事業開発は続けることができない。
意味価値への理解が浅ければ、流行のバズワードなどに乗って一時的に事業を立ち上げても、財務的な赤字(投資)を前に継続性と一貫性を保てない。そして価値を創造する前に頓挫してしまう。そのような事例を数多く見てきた。
意味価値を企業経営に据えるためには、経営者の信念と哲学が不可欠である。そしてそれは個人の想いにとどまらず、組織全体の価値観として共有されて初めて持続可能なものになる。財務価値は仕組み的に共有と維持がなされやすいが、意味価値の共有と維持には高いハードルがある。
結局「両利きの経営」を実現するとは、財務価値と意味価値のバランスをどう設計し、維持していくかという問いに他ならない。
多くの企業が新規事業開発を掲げながら成果を出せていないのは、根底に意味価値への理解とアプローチに信念と哲学が欠けているからだ。マクロ的に見れば、これこそが「失われた30年」の正体ではないかと思う。対照的に、この期間に伸びた企業は意味価値を基点に事業を築いてきたことがわかる。
意味価値は「重要な視点」ではなく、前提条件になっている。