価値観ほどではないが、企業組織を見ていると「立場による優先順位の違い」は常に存在する。
当たり前の話だが、人は自分の優先項目に囚われるものだから、その違いを意識して発信するのは難しい。
経営層は日々、株主・取引先・金融機関など内外から財務価値を問われ続けている。だから、判断軸はどうしても財務価値が主になる。
一方、部下は財務的な問いを直接ぶつけられることは少ない。その分、「なぜこの事業に取り組むのか?」という原点に価値を見出しやすく、意味価値が優先される。
この目線のズレは、主力ではない事業の評価で顕在化する。
もともとは新規事業として立ち上がった事業でも、時間が経つと“始めた理由”が曖昧になっていく。挙げ句の果てには、経営層でさえ「なぜこの事業を続けているのか?」がわからなくなっているケースすらある。
そうなると、判断は財務価値一本で下される。
部下側から見ると、「やる・やめる」の判断理由が意味価値の観点から説明されないので納得しにくい。
本来、事業の意味的価値を意識することは、その事業の出発点そのものだ。
だが、長く同じ事業を続けていると、運営そのものが目的になりがちで、事業の意味価値に立ち返る視点が失われていく。
危ない、危ない――。