openhorizon_logo_black

My Sight

私が仕事で思ったこと、感じたこと、気になること、をメモ的に書いていきます。

AI時代における職人性

AIが普及しはじめて、「誰でもできること」が急速に増えた。
文章を書く、デザインをつくる、資料をまとめる——これまで時間と経験を要した仕事の多くが、驚くほど短時間で形になる。まるで、初心者でも上級者のように見せてくれる“支援装置”のようだ。
だが、その一方で、職人性はどこへ行くのか、という問いが浮かぶ。
AIが表現や設計の「標準解」を出してくれるようになると、標準の中での巧拙や工夫は、ほとんど意味を持たなくなる。
型を整えるスピードや精度では、AIに勝てる人間はいない。
しかし、型そのものを超えて「何を作るのか」「なぜそれを作るのか」という問いを立て、意味のある逸脱を生み出すこと——ここにこそ、職人性は残る。
思えば、職人の世界にも似た構造がある。
熟練の大工は、図面通りに木を切ることよりも、木のクセや湿り気を読む。
陶芸家は、ろくろの上の土を「形にする」のではなく、「土の声を聞きながら形になっていくのを導く」。
そこには、教科書化できない「勘」や「間」がある。AIにはまだこの領域がない。
情報を扱うことはできても、「意味」を扱うことはできないからだ。
AI時代の職人性とは、この“意味”を扱う力のことかもしれない。
AIが提示する80%の完成品を前にして、「なぜこれを良いと思うのか」「本当にこれで伝わるのか」と自問できる人。
AIの答えを素材として、自分なりの手触りに変えていける人。
その人こそが、新しい職人なのだろう。
AIは多くの人を「上手く」してくれる。
だが、「深く」してくれるわけではない。
だからこそ、職人性は失われるどころか、これからさらに輝きを増す。
AIが型を整え、人が意味を吹き込む。
そんな時代のものづくりが、静かに始まっている。