長年の慣習の中で、企業には無数のルールが積み上がっていく。
その上に、コンプライアンスだ、SDGsだ、と新たな要請が重なり、さらにルールが増えていく。
一つひとつを取り出してみれば、それぞれに道理があり、目的も正しい。
だが、全体として眺めたとき、それらがどこへ向かっているのかは、もはや誰にも分からない。
そこにあるのは、方向性を失った「カオス」だ。
企業内の活動は、その堆積物の塊でできている。
そこにどれだけのコストがかかっているのか、どれだけの効果があるのか。
正確に答えられる人はいない。
こうなると、本来は価値を生むための企業活動が、
リスクを回避し、説明責任を果たすこと自体が目的の活動へと変質していく。
「失われた何十年」の本質は、戦略的な目標設定ができなかったことだけではない。
堆積物でがんじがらめになったプロセスに、コストと時間を吸い取られ、
価値創造に手が届かなくなったことにある。
では、これをどう打ち破るのか。
答えは単純だ。
企業活動の原点に立ち返り、価値を生むことに集中する。
ただし、そのために重要なのは「小さく分けること」そのものではない。
要点は、サブシステムをどう設定するか、
そして、それらにどの程度の多様性を持たせるか、である。
システムが大きすぎるなら、分割すればよい。
だが、画一的に分割されたサブシステムでは、結局同じカオスを再生産するだけだ。
戦略に基づいて役割の異なるサブシステムを設計し、
評価軸や意思決定のスピード、許容するリスクを意図的に変える。
その「違い」こそが、多様性の正体だ。
多様化の本質は、人材の多様性ではない。
まずサブシステムの多様性があり、
人材の多様性は、その結果として現れる。
戦略が先にあり、
手段として、どのようなサブシステムをいくつ持ち、
それぞれをどう運用するのか。
そこに、企業活動を再び価値創造へと引き戻す鍵があるように思う。