アメリカの大統領は、非常に幅広い権限を持っている。
それゆえに、一度暴走すると止めるのが難しい。
現在起きている“暴走”が今後どう収束するのかは分からないが、
システムとしては議会や裁判所がチェックを入れる仕組みになっている。
いわば事後チェックのシステムだ。
一方、日本の政治システムでは、首相が同じような暴走を起こすこと自体が難しい。
個人の判断で軍事行動を起こしたり、関税を引き上げたりする権限は与えられていない。
こちらは、入念な事前チェックを前提としたシステムと言える。
この違いを、企業経営の視点で眺めると、実に興味深いコントラストが見えてくる。
既存事業、いわゆる両利きの経営で言うところの「深化」には、事前チェックが向いている。
勝ちパターンはすでに確立しており、それを磨き込んでいく局面では、
事前のリスク確認や課題抽出が、事業の持続性・継続性を支える重要な要素になる。
一方で、新規事業、すなわち「探索」の領域では事情が異なる。
探索は本質的に事前にチェックしきれるものではない。
まず走り出し、結果を見て、学習する。
この事後チェックを前提とした試行錯誤のプロセスこそが、何より重要になる。
リスクばかりを考えていては、何も起こらない。
国家経営論として語るには荷が重いが、
企業経営として捉えると、事前チェックと事後チェックという対比は、
システムの違いを極めて分かりやすく説明する概念になる。
事前と事後、どちらが正しいという話ではない。
どこに、どのシステムを使うのか。
それを誤れば、長い目で見て企業の存続そのものに影響する。
企業の持続的な発展と成長には、
事前にチェックし慎重に進める「深化」の領域と、
時に暴走を許しながら新たな価値を見つけ出す「探索」の領域が、
同時に存在していなければならない。
これは、両利きの経営におけるオペレーションシステムの違いを説明する、
一つの分かりやすい定義なのだと思う。